反原発の不都合な真実


藤沢数希という方をご存知の人、どれくらいいらっしゃるでしょうか。

彼は外資系投資銀行で市場予測、リスク管理や経済分析を行ってきたバリバリの経済界のプロです。しかし、文系ではなく元々科学者で、アメリカの研究機関で計算化学、理論物理学の分野で博士を取得している理系の人間です。

彼はブログ「金融日記」で超有名なブロガーなのですが、何がそんなに非凡なのか。それは徹底的に冷静な論理力と、正確な分析力にあると思いました。

   

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例えば「原発の安全性」を語る上で、科学的に何を指標としているかを、「単位電気料あたりの死者数」で計算しています。

確かに、仮に1テラワットあたりの死者数を算出する事ができれば、それは発電の安全性に他なりませんね。

そして彼は著書の中で、これらを割り出し、しかもデータの出所がWHOなどのかなり多くの科学者のコンセンサスが得られているであろう国際研究機関の論文のデータを使用していました。信用できる統計データだと思います。

細かい内容については原著にゆずりますが、計算して出すと、驚くべき事に原発の単位電気料あたりの死者数は、太陽光や風力等に比べて低いという計算結果になっていました。風力発電や太陽光発電は、設置が難しく建設事故が起こり、そんなに死者数そのものは多くないものの、発電エネルギー量が圧倒的に少ないため、単位発電量あたりの死者数は多くなっています。逆に、原発は発電エネルギー量が多く、ウラン採掘やチェルノブイリによる事故での死者を分子に、発電エネルギー量を分母にもってくるとその値太陽光や風力よりは低くなるそうです。



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(2012/02/17)
藤沢 数希

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最初は目を疑いました。しかし、参考文献も明記されておりどうやら信頼できるデータでありそうです。

衛生学でも勉強しましたが、自然被爆量に対し、原子力発電による被爆量は微々たるもので、統計学的に無視できるほど小さいのです。そして教授も脱原発なんてアホだみたいな事をおっしゃっていました。どうやらトップの科学者は原発の安全性についてはさして問題ないと思っている方が多いみたいです。


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話はとびますが、やはり統計学こそ今の時代をかけぬける最高の学問なのではないでしょうか。

科学的にみて「データにバイアスがかかっていないか?」「数字をみて直感で判断せず、きちんと有意かどうか調べたか?」「年齢調整されているか?」常に問う。情報が錯綜する時代で、真実を見極める道具となりうるのが統計学なのではないかと思います。

統計学を学んでからというもの、テレビをみていて、最近色んなデータを出してくる人がいますが、「それ、有意かどうか調べた?」とツッコミたくなる場面も多数。データを鵜呑みにする事ができなくなるので、世界が変わります。

やはり医師は同時に科学者です。世間的に知識人とされる一方、それに伴って科学的に真実を導きだす責任があると僕は思います。

きっちり学んでいかねば…。

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Date: 2012.09.17 Category: 書評  Comments (2) Trackbacks (0)

この記事へのコメント:

masakazu

Date2012.09.19 (水) 01:09:20

初めまして。
すごく読みやすくて分かりやすいブログで感動しました。勉強させて頂いてます。
データの有意性に関して昨今の報道をみてもすごく疑問に感じることが多いですよね。ただ一方でその正しさを振るいすぎている人も多くみかけます。
特に日本のような互いを監視する傾向の強い社会においては、客観性よりも主観性が「生きる」という点で重要な意味を持つのだと思います。原発より火力の方が危険であるというデータを示してすら、それを感情的になって理解ができないなら、その方にとっては感情を優先させて火力を使ってあげる方が生きやすいのではないかなとも思います。
それは科学者ではなくて政治家の仕事だと切り捨てることもできますが人の人生を扱うことになる医師の卵としては科学的結果こそ全てとは言わずに、折角こんな立派な文章を書くような方ならその想像力は広げて頂きたいとでしゃばりました。すみません。

youngdr

Date2012.09.19 (水) 20:41:21

初めまして、コメントありがとうございました。

お褒め頂きありがとうございます。純粋にうれしいです。

おっしゃる通りで自分は冷静過ぎて人間味が足りないというか、人情が足りないのは自覚しております。医師になる資質として重要な部分ですし、それをご指摘いただいたことで再認識する事ができました。改善をつとめようと思います。

1つ、自分の意見としてですが、何かを判断しなくてはいけない際、全体の利益を常に俯瞰で確認していないといけないという事です。今回の場合で言うと、個人の最適化は集団に不利益をもたらす場合が多いという事です。確かにその方にとって「生きやすい」のかもしれませんが、それが全体としてどれくらい不利益を被るのか。最終的に決断を下す側の人間の立場に立つのであれば、そこは冷静に、科学的に、数値化したデータを元に、判断を下さなくては、むしろ全体に迷惑がかかるのかなと思いました。

といっても、おっしゃるように感情面を無視する事はできず(なぜなら感情的不快が”不利益”になりうるから)、その折り合い、バランスが重要なのかなとも思います。

貴重なご意見、ありがとうございました!

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